歴史SF小説『草莽ニ死ス 〜a lad of hot blood〜』

ク・セ・ジュ 〜月夜に君は何を想うか〜 考えるということは、要するに自分で何か映像をつむぎだしていくということだ。何かが、あたかも自分の眼にはっきりと映るかのようにしていくのが「考える」ことだ。どんな人でも、結局はそういうふうにして考えている

草莽ニ死ス 〜a lad of hot blood〜 第15話

★マーシャルです。なんかこんな久坂玄瑞、新鮮!って思うの自分だけでしょうか?喋らせてみると楽しいです。それでは15話をどうぞ。

 

「未来の新撰組隊士でございまする!」

「イア、ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!

 小佐吉の威勢を聞いたその時、久坂の背後から断末魔が響いた。声の主は寺島だ。

「て、寺島キュン!?」

 久坂が悲鳴の方をふり向くと、そこにはだんだら模様の羽織を着た影が4つ、凛として在った。

「随分と危なっかしかったね、命令違反クン。ですが彼らをここに引き留めたのはお手柄ですよ」

 1つは言わずと知れた総長、山南敬助であった。その羽織と太刀は真新しい紅に染まっており、今しがた寺島を切り伏せたのが彼であることを物語っていた。

「山南さん!」

「おっと、斉藤さんにノグチっち、それにボクも居るよ」

 見るに山南は藤堂と斉藤、ノグチを引き連れてきたようだ。幕府軍がここを制圧するのにはまだ時間が掛かりそうであるが、邸内の形勢が逆転したのは明らかだ。

「さて小佐吉君、早速疑問なのですが、先ほどの敵が三浦君の首を持っていたのを確認したのですが、私の目の前にも三浦君がいるのはどうしてなのでしょう」

「それは……」

 どこから説明したらよいものか、

「それはつまり、そういうことですよ。貴方も我々もあの方の掌の上で踊らされているに過ぎないって事。ひょっとして山南さん、自分だけが特別なのだ!って考えちゃうイタイ人ですかぁ」

 応えたのは久坂であった。状況は一転して追い詰められているというのに、その表情は相変わらず飄々としている。

「やはり象山殿は長州にも……、いいえ全ての勢力に技術を広めているのですね」

「でも、それがどうであれ手前の命がここまでなのに変わりはないよね。ノグチっち、早くやっちゃおうよ」

 藤堂はどうやらこのやり取りに早くも痺れを切らしたようで、はやく太刀を抜きたくてうずうずしている。斉藤が腕で止めていなければ真っ先に斬りかかっていただろう。

「まったく、どうして壬生の犬どもはこうも我慢できない奴らが多いのだろぅか。君アレでしょ、好きなものは最初に食べちゃうタイプでしょ。でも、それは頂けないね。」

 久坂の表情が厳しくなり、若干の悔しさが見て取れた。

「生憎だけど、ここにあった資料は既に同士が回収済み。この場所にもう用はない。まぁ、君たちの資料が手に入らないのは残念だけど、そろそろ撤退するよ。藩の為に死ぬ俺マジカッケェ!!!とか超寒いし」

「久坂さんは必ず返せと、桂殿からのご指示だ。貴様らの相手は我らだ。」

 もう一人の三浦が腕を上げると、新たに鎧をつけた兵が2、3人現れた。おそらく邸内に隠していた屍兵の残りであろう。だが、動きはどこかぎこちない。新撰組の精鋭を相手にしたのならば数分も持たないであろう。

「そのような木偶人形が数体で、ここから活路が開けるとでも?」

 今度は斉藤が問うと、三浦は微笑を浮かべそれに応えた。

「所詮我らは死にぞこない、死人には死人にしか出来ない戦いがあるものよ」

 三浦は銃の火種を身体に押し付けた。他の兵士もそれに続く。

「まずい、山南さん!奴ら自爆するつもりですよ」

 藤堂はそう叫んだ瞬間、辺りは白色と轟音に包まれた。

(第15話終わり)