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ク・セ・ジュ 〜月夜に君は何を想うか〜

考えるということは、要するに自分で何か映像をつむぎだしていくということだ。何かが、あたかも自分の眼にはっきりと映るかのようにしていくのが「考える」ことだ。どんな人でも、結局はそういうふうにして考えている

歴史SF小説『草莽ニ死ス 〜a lad of blood〜』   第12話

★マーシャルです。更新が遅れたこと、申し訳ないです。禁門の変に関して勉強不足が目立ってしまう……

 

長州の首が揃って鷹司邸へと潜ったらしいでっせ。なんでも鷹司邸ってのは朝廷たちのおわすところと聞きやすじゃないっすか……」

 三浦はニタニタと邪悪な笑みを浮かべている。

「その可能性は十分にありますね。鷹司様は長州贔屓な上、関白に就かれていたお方。戦況が不利となった今、彼らに残された手段は朝廷への嘆願を届ける事のみです」

「つまり、ヤツらは最後の望みをそのお公家様に託してるってわけか」

 山南の分析に近藤が答えると、三浦は待っていたかのように言を進める。

「その通り。だが、都で戦争を始める長州共だ。お公家様の邸宅でどんな狼藉を働くか分かったものじゃねぇ。我ら新選組はいち早く鷹司邸に向かい奴らを討たねばなるまい」

 もちろん、彼のいう事は建前だ。本心では今にも戦の最前線で暴れまわることしか考えていない。しかし、功績を得たいという意味では近藤を含め、新撰組全員が同じであった。

「近藤さん、ここは三浦が言うように我々も早く鷹司邸へ向かうべきでは」

「京を守るのはわれらの役目です」

「他の藩の奴らにいい所を持っていかれたままでいいのですか」

 近藤は暫し考えたが、最終的には隊の雰囲気にのまれた。

「分かった。山南、三浦と数人連れて先行しろ。」

 その言葉を聞くや否や三浦は我先にと、その場から走り去った。周りは三浦の粗暴さに呆れかえっていたが、山南だけは小佐吉もその場からいなくなったことに気づいていた。

 

 小佐吉が、鷹司邸にたどり着くと辺りは長州兵と越前兵が既に戦闘状態に突入していた。銃声や怒号はむろん、門の付近が最も激しくとても邸内に入るどころではない。

 さて、どうしたものかと考えていると、三浦が小佐吉にこっちにこいと手を招いていた。向かってみるとそこは正面からは死角となり崩れかかった塀のそばであり、これなら二人がかりでならば登る事が可能であろう。

「正面は無理だ。だとすると忍び込むしかねぇ、肩ァ貸せ」

 なるほど、こういうところは狡賢いというか、機転が利く人間のようだ。小佐吉は素直に従うと三浦は塀に素早く登り、小佐吉も手を借り後に続いた。

「いいか、さっき見た限りじゃあ大将はすでに邸の中だ。手分けして探して見つけたらすぐに俺に伝えろ」

 言い終わるやいなや、抜刀し屋敷に飛び込んでいく。

 小佐吉も遅れまいと脇差を抜いた。邸宅は一見静かだが、おそらく中では乱戦となっているであろう。ここで何としてでもここで功績を得なくては……

 だが後を追おうとしたその時、縁側の下で影が動いているのを見逃さなかった。

 

「どこだ、どこだ、どこだ、どこだ」

 三浦は障子やふすまをけ破りながら、室内を探し(荒し)回っていた。しかし、室内は長州兵どころか屋敷の住人すらいないもぬけの殻であり、それが彼を苛立たせた。

「くそっ、なんで敵が誰もいねぇんだよ。これじゃ俺の活躍が水の泡じゃねぇか」

 苛立ちが余計に粗暴さを際立たせる。しかし、彼もここに来て屋敷の異常さに感づき始めた。

「ん、じゃあどうして奴らはここを目指しているんだ。公家もなんも居なかったらここに来る意味なんて無ェじゃねぇか」

「それはここが京での我らの屍研究の拠点だからだ」

 気がつくと、三浦は背後から脇差によって胸を貫かれていた。

「お前ェは、久坂玄瑞

 

「止まれっ、新撰組だ」

 小佐吉は縁側に潜んでいた影を追っていた。影は巧みに戦闘区域を避けながら移動していた。恐らく小佐吉も塀の上で気づかなければそれには気づかなかっただろう。

「なんでございますか。私は鷹司様に仕える者、逃げ遅れただけで決して物取りなど……」

「そのような臆病者が誰にも気づかないように気配を消してここまで逃げられるものか、長州の者かどうなのだ」

 小佐吉の鬼気迫る勢いに、影は再び黙したが付近には新たに殺気が篭もり始めた。

 

(第12話おわり)